テーマ【共に生きる】
- 2019.12.1
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- 所属:
- 仁誠会クリニック黒髪
- 職種・資格:
- 看護師
- 名前:
- 中間 恵子
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仁誠会では、「心ひとつ」の理念の浸透のため、毎日その日の指針となるフィロソフィを制定しています。
このフィロソフィの中から、自分が取り組んだ事を論文にまとめ、年一回全職員の中から最優秀賞1名、優秀賞若干名を選び表彰しています。その優秀賞を受賞した論文をご紹介いたします。
准看護師として入職して4年目に入った今年度は、個人面談や家族面談、家庭訪問などの患者やその家族との関わりの重要性を考えるようになりました。それまでは、家族に連絡をすることさえ苦手でしたが、ある1人の患者の家族面談をきっかけに私の中で考え方が大きく変わりました。
患者K氏は、70代で独居の男性患者です。家族は30代の息子しかおらず、最近遠方から熊本に戻って来たが、別々に暮らしていました。男同士でもあるため、頻繁に連絡を取るような間柄ではありませんでした。K氏は以前から、リンの高値と体重増加量多いことで、度々ベッドサイドで指導されていましたが、データは改善しませんでした。そこで、まずは3ヶ月連続で、別室での個人面談を試してみました。栄養士を交え、しっかり話を聞き、解決策を患者と話しましたが、やはりデータの改善には至りませんでした。
しかしこの頃からK氏の言動に変化が見られるようになりました。頑なに拒んでいた通所リハビリに通い始めることになりました。さらに、息子には心配をかけたくないから連絡はしないでほしいと言われていたが、家族面談をすることを承諾してくれました。家族面談を行うため、初めて息子に連絡をしたが、折り返しの連絡もなく、なかなか日程が決まらなかったので、息子に対して非協力的な印象を受けました。
やっと日程が決まり、面談を進めていく中で、息子からたくさんの質問がありました。その場で事前指定書の聞き取りも行い、K氏は「最後は何もしないで良い」と言われたが、息子が強く反対し、「最後まで手を尽くしてください。まだ生きていてほしいから」と言われました。息子は非協力的ではなく、無知で何をしたら良いのか、分からないだけだったのではないかと思いました。それと同時に息子の想いを知ることができたK氏はとても嬉しそうでした。
その面談の翌月から、リンの値が基準値を下回り、4か月もの間それを維持することができ、体重増加も以前より抑えてくることができるようになりました。人間には誰かに認められたいという欲求が根底にはあり、それを満たすためには他者の存在が欠かせません。今回の家族面談で、希薄だった親子関係を、私たち医療従事者がつなぐ場を提供でき、お互いの想いを初めて知ることで、データの改善に至ったのではないかと思います。
この家族面談以降、息子からもクリニックに連絡がくるようになり、何かあればすぐに連絡がとれる関係性を築くことができました。私もK氏の息子がどのような人物かわからず不安だったように、家族も同じだったのではないかと考えました。
共に生きる。慢性疾患患者である透析患者には、この共生のための援助が必要ではないかと思える経験であり、今後も患者への関わりを積極的に行って、透析生活がより良いものになるよう支援することができる看護師になりたいと思います。