フットケア便り5. 歩行について
- 2019.11.22
- 仁誠会クリニック大津 フットケアについて
普段、私たちは、歩くことを意識することはないのではないでしょうか?
ほとんどが舗装された道路であり、歩くことを意識する必要がなくなってしまいました。生活環境の中で、いろいろな歩き方をされ、知らないうちに悪い歩き方が身についてしまっていませんか。高齢になると、関節の拘縮や筋力低下により、すり足になりがちで、多少の段差でもつま先が引っかかり転倒しやすくなります。
悪い歩き方は、身体にさまざまな弊害を与えてしまいます。自分の足で歩き続けるためには、正しい歩き方で、自分で歩ける足を守りましょう。
人はいつから歩くようになったのか?
今から約600~500万年前に、地球上に最初の人類が誕生したと言われています。世界各地で発見された人類初期の化石の研究が進み明らかになったことは、ヒトはその時代から高い知識を持っていたのではなく、直立二足歩行を始めたことによって、現在に至る高い知識を獲得してきました。ヒトが人へ進化した最も大きな理由が直立二足歩行でした。
ヒトの足の特徴
①ヒトは歩行するときに踵をついて歩く
②ヒトが歩くときは、母趾のみによる蹴りだしがある。
③人の足には土踏まずがある
人の足には、身体をしっかり支え、歩行や運動時の体のバランスを保ち、地面からの衝撃を緩和させるという非常に重要な機能が備わっています。
日本人の歩行の特徴
すり足
①片脚を前方に出すだけで前進しようとする場合出した脚に力を入れて胴体を前方に引っ張ることになる。
②腕を振らずに、着地した脚の膝を曲げて、腰を落としやや前傾した姿勢になる。
③腕も含め、上体と腰を固定して、腰から下だけの運動で前進しようとする。
【すり足】:玉砂利を踏む神官・街中での力士・和服・和室での歩き方
この歩き方は田んぼのようなぬかるみの中を歩く場合や、室内で足音を立てないで歩く場合に適しています。能や狂言で演じられる歩行動作も、昔の日本人ならごく日常の歩行方法。
欧米人の歩行の特徴
振り子運動
①後方蹴り出しを推進力として歩く
②後の足の爪先で後方蹴り出し、残った脚を真っすぐ前方に伸ばしてつっかえ棒にして着地する。これは両脚の振り子運動であり、その振り子運動を増幅するために腕も逆位相で振る。
【振り子運動】:脚と腕が交互に振られる“ねじれ”で腰も旋回するので、全身運動になる。平坦な大地を長距離歩くのに適してる。洋服で外を歩くときはこの歩き方。
高齢者の歩行の特徴
歩行のメリット
①筋肉量が増え足の血管のポンプ機能が増す。
②血液循環が改善する。
③足裏の体重移動を意識し、親指でしっかり蹴りだすことで浮き指・巻き爪の予防になる。
正しい歩行のポイント
①まずは立位の姿勢がきちんとできていること
②足をしっかりと上げる
股関節から足を動かし、踵までしっかりと上げて歩くようにしましょう。
ただし、上げすぎてしまうと、足を着地させたときの負担が大きくなります。膝が軽く曲がるぐらいがよいでしょう。
歩行中の足の動き
③足裏の体重移動を意識する
足を着地させるとき
かかと → 足裏の外側 → 小指の付け根 → 親指
の順で体重移動し、最期親指で蹴り上げ、ふくらはぎの筋肉を動かすことを意識しましょう。
④腕をしっかりと振る
歩くというと、ついつい足ばかり意識が向かいがちですが、腕を振ることも大事です。ただ振るのではなく、肩甲骨からしっかりと振りましょう。
⑤背筋を伸ばす
背筋が曲がっていては何の意味もありません。顔と目線を上げて背筋を伸ばして歩きましょう。呼吸も深くできるようになります。悪い歩き方は、身体にさまざまな弊害を与えてしまいます。自分の足で歩き続けるためには、前回の正しい靴の選び方とはき方だけだは不十分です。日常生活で歩き方を意識してみませんか。
仁誠会クリニック大津 フットケア指導士 田浦 智美(看護師)