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サルコペニア予防を考えたリンの上手な摂り方

リンは生命維持に欠かせないミネラルの一種で、血液中のリン濃度は腎臓の調節機能によって一定に保たれています。しかし、腎機能が低下すると余分なリンを尿中に排泄できないため、高リン血症になります。高リン血症が長期間続くと動脈硬化が進行し、心不全や脳梗塞など深刻な合併症を引き起こします。また、二次性副甲状腺機能亢進症により骨が弱くなり、骨折もしやすくなります。

このように、高リン血症の予防は元気で長生きするために大切です。一方で近年は高齢者のサルコペニアが注目されており、透析患者さんにおいても必要量のたんぱく質を摂取し、サルコペニアを予防することが大切といわれています。たんぱく質は主に肉・魚・卵・大豆製品に多く含まれますが、たんぱく質が豊富な食品はリンも多く含まれます。採血の前日に焼肉やステーキを食べたらリンがいつもより高かった・・といった経験はありませんか?当院の透析患者さんからもよく聞かれます。また、リンの制限をしっかりされている患者さんほど、たんぱく質が不足していることが多いように思います。

そこで、「リン/たんぱく質比」を意識した食品の選択がポイントになります。リン/たんぱく質比とは、食品に含まれるたんぱく質中のリンの割合です。下記の表のようにリン/たんぱく質比が少ない食品(=たんぱく質の量のわりにリンが少ない)を選び、必要なたんぱく質をしっかり摂りつつ、リンの摂取量を抑えましょう。

 

仁誠会ブログ(2024ながみねCL栄養科)

 

※参考文献 「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」

レバー・ホルモンやわかさぎ・ししゃもなどの小魚類、牛乳・ヨーグルト・プロセスチーズ・アイスクリームなどの乳製品は「たんぱく質が少ないわりにリンが多い食品」です。チーズ好きな透析患者さんによくお勧めしているのが、プロセスチーズよりカマンベールやモッツァレラチーズなど「ちょっと贅沢なチーズ」を選び、少量楽しむという方法です。

リンを多く含む食品は美味しいものばかりです。食事制限が辛いと感じる方も多いと思います。「食べてはいけない」ではなく、「どのくらいまで食べていいのか」を一緒に考えてみませんか?必要なたんぱく質はしっかり摂りつつ高リン血症の合併症を予防し、元気に楽しい食生活を送りましょう。

 

仁誠会クリニックながみね 管理栄養士

※イラストはすべて「いらすとや」から引用