スタッフの声Voice of staff

テーマ「患者さん・利用者さん第一」

  • 2022.12.9  
  • 所属:
    ケアセンター赤とんぼ 栄養科
    職種・資格:
    管理栄養士
    名前:
    M. H
  • 仁誠会フィロソフィー論文

2022年 仁誠会フィロソフィ論文 優秀賞

 

栄養士の業務は、患者・利用者さんへの食事提供を軸として、栄養管理や栄養教育等多岐にわたる。私は、仁誠会で透析栄養士としてクリニックを経験後、10数年前赤とんぼに配属された。

当時は、利用者さんとコミュニケーションをとるのが苦手だった。その理由を今考えると、利用者さんと関わる頻度や時間も少なく、どう接していいか分からなかったのだと思う。利用者さんや職員と表面的にしか関われていなかったことがその頃の反省点として残っていた。

その後、クリニックに異動になり、ケアマネージャーや嚥下サポーターなどの資格を取得し、3年前に再び赤とんぼ配属となった。
これまでのクリニック経験の中で、多職種連携の底知れぬパワーを実感し、赤とんぼでも実現したいと思っていた私は異動後、栄養士が入所フロアに常駐し、医師、介護士、看護師、リハ科、フロントと同じ空間で仕事をする方法を導入した。10数年前のトラウマを払拭したいという想いも強かった。

利用者さんや職員に対する栄養士の関わり方を変えたことで、他の専門職と直接相談する時間が見違える程増えた。利用者さんの日々の生活を見ながら、栄養ケアに取り組め、診察や処置の様子を見たり、利用者さんの隣で仕事をしたり、入浴の後、脱衣所で臀部褥瘡の様子を見ることも現在は当たり前になっている。

ある看護師さんから『いろんな病院や施設で働いてきたけど、こんなに身近で管理栄養士さんが働く施設、私見たことないよ。』と言われ嬉しかった。NDソフトの導入で、IT化が加速し情報収集がより効率化したのも追い風になった。

今は、多職種と関わりを持ちながら、目の前の利用者さんに対して多角的な視点でのケアを実現できているのが、とにかく楽しく、チームの一員として働くことにやりがいを感じている。
以前の関わり方とは大きく変わり、私が想い描く理想の栄養士像に近づいている。私一人では実現出来なかったので、システム改革の提案を受け入れ、一緒に取り組んでくれた栄養士の仲間たちに感謝しています。

また、昨年から新しい取り組みとして食事介助の業務を始めた。
最初は、不安もあったが、やってみると多くの気づきが得られた。自立を促しながら、支援する。利用者の自立に寄り添い、姿勢、食事のペース、好みの食べ物、むせやすい物、口に入れるタイミング、疲れが見られる時間、声かけの仕方、体調や覚醒状況で食事介助の仕方を変化させなければいけないことなど学んだ。

また、食事介助をすることで、自分たちが提供している食事の質を評価することができた。普段のミールラウンドとは違う角度で新しい問題点が見えてきた。

そのひとつが、全粥の離水だ。食事を介助している間にお粥から離水が確認された。離水とは、簡単に言えばお粥が米と水に分かれることで原因は、唾液とでんぷんの化学反応や塩分濃度など。
それは、嚥下機能の低下した利用者さんにとってはむせの原因ともなり、かなり危険である。むせ始めるとなかなか咳が止まらず、摂取量が低下し、栄養リスクも高くなってしまう。誤嚥性肺炎を併発することもある。

どうにかしなければと、栄養科内で提案し、対策を立てた。
その結果、“とろみ粥”という主食の種類を新たに追加した。全粥にとろみ剤を混ぜ、離水しない工夫をしたのだ。とろみ粥を作ったことで、食事介助していた利用者さんもお粥でむせることがなく、食事時間も短縮した。また、同じように離水でむせていた利用者さんもとろみ粥に変更した。

食事介助をし、問題に気づき、策を講じて利用者さんの栄養ケアに繋がったことは私の大きな自信となった。その自信が次の挑戦につながり、好循環でもっといいものを、もっと利用者さんのためにという結果につながっていくのだと実感した。次は、食欲不振食について解決していきたいと考えている。
また一方で反省点もあった。食事提供後の評価が不十分だったことが栄養科の課題だと気づいた。色々な業務の中でP D C AのCの部分を明確にするシステムが必要だと感じ、反省している 。

今回、食事介助という新たな業務に挑戦したことで、日々提供している食事をこれまでの方法とは違う角度から評価し、栄養ケアの質向上につなげた。

新しい業務をはじめる中で、私が大切にしていることは、まずは、動く(挑戦する)こと。次に、問題意識を持って取り組むこと。そして、気づきを問題、課題として出すこと。最後に、講じた新しい策をP D C Aで評価していくこと。失敗したら、またチームで別の策を講じること。である。

管理栄養士として、患者さん利用者さんのために、これからも力を尽くしていきたい。