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臨床工学技士の様々な業務 ~洗浄剤編~

私たち臨床工学技士は、安心・安全な透析を提供するために、様々な業務を行なっています。今回は透析の機械の中を綺麗にするために使っている洗浄剤について紹介します。
仁誠会クリニック新屋敷

1.洗浄剤の種類

当院で使っている洗浄剤は主に2つあります。
①次亜塩素酸ナトリウム:アルカリ性
「まぜるな危険」で馴染みのある、家庭用でもよく見る「塩素系漂白剤」に含まれる次亜塩素酸ナトリウムを使っています。幅広く殺菌作用があるので、使い勝手が良く安価なことも利点です。

②酢酸洗浄剤(過酢酸洗浄剤):酸性
あまり聞きなれない薬剤ですが、透析の洗浄にこの洗浄剤は欠かせません。透析で毒素を取り除くために使っている透析液は長時間そのまま放置すると「炭酸カルシウム」(黒板で使うチョークの成分)が出てきます。その炭酸カルシウムを取り除くのに必要な洗浄剤が酢酸洗浄剤です。加えて、洗浄効果のある過酢酸も含んで過酢酸洗浄剤というものを使用しています。次亜塩素酸ナトリウムに比べ高価なものです。

③熱水消毒:中性
①・②とは違い、薬剤を使用するわけではありませんが、ベビー用品などでも活躍する煮沸消毒と同じことを行なっています。配管内にある水を80度近くまで熱することで、薬剤が行き届きにくい隅の方まで、熱さが移っていき消毒効果を発揮することが出来ます。

2.薬剤の取り扱いにも注意!
紹介した①と②の薬剤が混ざってしまうと、有毒なガスが発生してしまいます。業務用の物を使用しており、家庭用の物に比べかなり濃く作られているためその被害も甚大です。取り扱いには細心の注意を払っています。

3.洗浄剤の排水について
2017年末、国内の某透析施設から、下水道法基準を著しく逸脱した排水によって下水道管損傷事故が発生したとの報告がありました。これにより2019年、日本透析医学会から透析排水基準が策定されました。
基準の内容として

  • 水素イオン濃度(pH)が5 を超え 9 未満 であり、pHの測定回数は ひと月に1回、望ましくは1週に1 回以上であり、(pH)が最小と予想されるタイミングで測定する。
  • 排水時の排水温度は45℃未満、 透析システムを熱水消毒(主に85℃以上)する場合、排水時の温度を監視する安全機能(希釈または自然冷却によるもの)が正常に作動し、基準温度未満であることを(pH)の測定に準じて定期的に確認・記録する。
臨床工学技士 臨床工学技士

仁誠会クリニック新屋敷でも、透析排水を適正に処理するための中和処理装置は2015年の開院当初より導入していましたが、外部業者にメンテナンスなどを依頼していて、私たち工学技士が排水に関わる機会はあまりなく、業者へ任せきりになっていました。管理するだけなら業者へ任せることも可能ですが、それではダメだと思い、勧告後は速やかに確認作業を臨床工学技士の業務として取り入れ、排水に対する意識向上に努めています。
ただ配管洗浄薬剤を使用するのではなく環境・設備への影響も考えたうえでの、各配管洗浄薬剤の使用濃度、洗浄時間などを適正に検討しなければなりません。
臨床工学技士の業務は透析に関することだけでなく、幅広い知識・技術が必要です。

これからも、患者さんが透析を安心・安全に受けられるように様々な面からサポートしていきたいと思います。

―仁誠会クリニック新屋敷 技士部 T.S(臨床工学技士)―